美味しいワインを造るためにワインの生産者たちは、ぶどう樹に収量制限を設け、最適なぶどうの収量を追求しています。ぶどう樹は、本質的につる植物であるため、何メートルのもの高さに成長できるだけでなく、高く成長すればするほど、より多くの実をつけることが出来ます。
しかし、現在のワイン用ぶどう樹の栽培法は、「盆栽」の作り方に似ています。根を鍬で耕すことで、出来るだけ真下の一方向に伸びるよう制御し、葉は高さも常に 1 m を超えないように常に剪定します。
収量制限とワインの品質
一般的に、収量を少なくすればするほど、最適な成熟が達成しやすくなると言われています。その上で、最適な収量とは、一体どれくらいなのかは、意見が分かれるところです。ブルゴーニュの場合、同じ等級であれば、白ワインが 40 ~ 60 hl/ha、赤ワインが 30 ~ 40 hl/ha が認められ、白ワインの方が多くの収量が認められていたため、ブルゴーニュにおいて、白ワインの生産の方が赤ワインより多い要因の一つになっています。
ブルゴーニュの場合、主力品種のシャルドネやピノ・ノワールとも、ぶどう樹を放置すると、法律に規定されている収量制限と比べて 2 倍以上の収量が得られます。よって、生産者たちは、きめ細かな剪定や地面を覆う被覆植物などにより、収量を制限しながらぶどうを栽培しています。
一方で、法律上の収量制限よりもさらに低い収量にすると、ぶどうの品質が一層高くなることを示す明確な根拠は示されていません。それは、多くの場合において、ぶどう果実から得られる果汁の抽出成分が重くなり、ある意味では、印象的なワインが造れるかもしれませんが、バランスに欠ける場合が多くなるためです。
台木や植栽の性質
ぶどう樹の台木とクローンやマサル・セレクションによる植栽は、収量に直接影響します。果粒の大きさ、中身が詰まっているか疎らかなどぶどう果房の形状は、どのようなクローンやマサル・セレクションによって選抜されたぶどう樹を用いるかによって異なり、収量にも影響します。
植栽の密度
ブルゴーニュでは、ワインの質との最適なバランスとして、1 万本 / ha、樹間が 1 m という植栽密度が一般的です。植えるぶどう樹の数が多くなると、個々のぶどう樹同士が、地下で根が占める体積を巡って競争が起き、その結果、ぶどうの収量が低くなります。植栽密度については、生産者によっては、更なる密植を行う例、例えば、サン・トーバンのオリヴィエ・ラミーは、28,000 本 / ha という非常に高い植栽密度でぶどう樹を植えている例も見られ、ぶどう樹の根が、垂直方向により深く伸び、地中深くからミネラル分などをより多く取り込めるように工夫している生産者が見られます。
被覆植物
ぶどう樹の間に生える被覆植物は、根を張る場所を巡ってぶどう樹と争い、結果的にぶどう樹の樹勢を抑え、ぶどうの収量抑制が進みます。
摘果
花または果房を摘除する手法です。摘果は、生産者にとって、最後の手段と位置づけられ、基本的には避けるようにしていることが多いです。ぶどう樹が成長期に入る前、遅くても開花時期の前に、剪定をしっかり行って、最初から果房の数を減らしておくことに専念するのが理想的と考えられています。摘果は、7 月頃に、緑の果房を摘果して、目標とする収量に合わせていくことを目的とする事例が多いです。