イギリスは、2000 年代以降、南部のウエスト・サセックス州、ケント州などでワイン造りが盛んになり、上質なスパークリング・ワインが生み出されるようになりました。生産されるスパークリング・ワインの中には、「ナイティンバー」などのようにシャンパーニュに匹敵する評価を得ているワインも出てきています。まだまだワインの生産量は少ないものの、今後、より注目を集めていきそうな、イギリスのスパークリング・ワインについて纏めました。
ぶどう栽培の北限を越える寒冷な気候
イギリスは、元々、ワイン用のぶどう栽培の北限と言われてきたドイツのワイン産地よりも北に位置し、寒冷な気候と曇りがちな天気による日照量の不足からぶどう栽培に適さない土地と言われ、ワイン造りは、盛んではありませんでした。しかしながら、イギリスで、ワイン造りが開始されたのは、実は 、11 世紀と古く、ヨーロッパ大陸から移住してきた聖職者たちによってワイン造りが開始されています。ワイン造りの歴史は古いものの、寒冷な気候と、16 世紀に起こった宗教改革による教会勢力の衰退によって、ワイン造りは、盛んにならないままでした。
優れた生産者の登場
転機となったのは、イギリスのウエスト・サセックス州にて、1988 年に、アメリカ人の夫妻が、「ナイティンバー」というワイナリーを設立して、ワイン醸造用にぶどう樹を植え、1992 年を初ヴィンテージとして、シャンパーニュに劣らない優れたスパークリング・ワインを生産したことです。
「ナイティンバー」は、瓶内二次発酵、長期間の熟成など、「イギリスという国で世界最高峰のスパークリング・ワインを造る」という理想を掲げ、初ヴィンテージ以降、こだわり抜いた素晴らしいスパークリング・ワインを一貫して生み出していきます。ナイティンバーのスパークリングワインは、1997 年と 1998 年の 2 年連続で、「インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション」にて、ゴールドメダルを獲得し、国際的な評価と世界中からの注目が集まりました。また、ナイティンバーの成功を受けて、イギリス南部に、スパークリング・ワイン造りが広まっていきました。
シャンパーニュに似た土壌、温暖化の影響
イギリス南部のケント州、ウエスト・サセックス州は、シャンパーニュに似た石灰質土壌が広がっていて、ぶどう栽培に適した土壌が広がっています。寒冷地帯で、ぶどう栽培には厳しい自然環境の広がるイギリスにあって、比較的温暖な地域です。とりわけ、温暖化の影響によって、ぶどうの生育期である春~秋にかけての気温が上昇し、イギリス南部は、ぶどう栽培の適地になりつつあります。また、栽培されているぶどう品種は、シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエとシャンパーニュと同じぶどう品種です。
国際的な評価の高まり
2000 年代頃より、シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエのぶどう品種を用いて、シャンパーニュに匹敵する高品質なスパークリング・ワインを造る生産者が、「ナイティンバー」以外にも複数現れ、イギリスのスパークリング・ワインの国際的な評価が高まっていきました。少量生産のこだわり抜いたワイン造りをしている生産者が多く、生産者の中には、5 年という長期間の熟成を経てから、スパークリング・ワインを出荷する生産者がいるほどです。
現在、イギリスでは、150 軒のワイナリーがあり、その多くは、スパークリング・ワインを生産しています。イギリスにおけるワインの生産量は、まだまだ少ないものの、温暖化によって、今後も気温の継続的な上昇が考え得るため、ワインの生産において、イギリスは有望な国と考えている生産者が多く、イギリスで美味しいワインを造ろうと考える生産者が増えてきています。実際、「ナイティンバー」をはじめ、シャンパーニュと遜色ない評価を得ている生産者も増えており、今後、注目していきたい産地と言えます。