ワインについて調べていると、カリフォルニア大学デービス校醸造学部という名称を聞くことがあります。そこで、カリフォルニア大学デービス校醸造学部について、簡単に纏めてみました。
カリフォルニア大学デービス校は、農学の分野で世界トップ、醸造学部も世界をリード
カリフォルニア大学デービス校は、農学・獣医学の分野で、世界のトップに位置付けられる大学として有名です。カリフォルニア大学デービス校には、醸造学部があり、数多くの有名なワイン生産者・醸造家などを輩出し、ぶどう栽培及びワイン醸造学の分野において世界をリードしています。
大学のキャンパス内外に、ぶどう畑とワイナリーがあり、大学の所有するぶどう畑の面積は、200 ha と広大です。様々な品種のぶどうが植えられ、学生へのぶどう栽培や醸造法の教育、様々な病害虫に耐性のあるぶどうの研究や、旱魃や病気・害虫等に強い品種の開発に用いらています。
カリフォルニア・ワインの発展を支えている
カリフォルニア大学デービス校は、カリフォルニアの銘醸地であるナパ・ヴァレーから 45 分と至近距離に大学があり、ワイン生産者たちとも密接に関わりながら、カリフォルニアにおけるワイン産業の発展に寄与しています。
カリフォルニア大学の土壌学研究者たちは、1880 年代には、土壌から塩分を除去する手法を確立して広め、不毛の地を農地に変え、20 世紀初めころまでには、フィロキセラに耐性のあるぶどう樹や植樹の方法を開発したりして、カリフォルニアにおける初期のワイン産業を支えました。
1920 年に施行された禁酒法によって、大きな打撃を受けたアメリカのワイン産業ですが、1933 年に禁酒法が廃止されると、1935 年に カリフォルニア大学バークレー校に醸造学部が設置されます。
醸造学の研究者たちは、カリフォルニアにおける微気候・土壌に関する詳細な分析を行い、そして、各地域や区画において、シャルドネ、カベルネソーヴィニヨンなどの様々なぶどう品種から、各地域や区画に最適なぶどう品種を示し、最適なクローンを選定しました。これらの研究は、1944 年に「ぶどう栽培地域に関する研究」として纏められ、現在のアメリカにおける原産地呼称制度の原型となっています。カリフォルニア各地の微気候と土壌にあわせて、最適な品種を栽培することで、カリフォルニアにおけるぶどう栽培において、収穫量の増加、果実の品質向上が進み、最終的にはワインの品質が向上していきました。
ワインの味わいに関する研究などでも成果
また、ワインの生産のみならず、ユニークな研究として、例えば、味わいに関する研究なども行われています。「調和のとれた」というような抽象的な言葉纏めらがちなワインの味わいを、1984 年に、ワインの官能評価の客観的な方法としして、より具体的に・記述できる形で示す「ワイン・ホイール」 (Wine Wheel) と呼ばれる手法を、メイナード・アメリン (Maynard Amerine) 教授が確立し、現在、世界中で広く用いられています。例えば、「木の香り」がするか、もしそうなら、「焦げた」または「樹脂のような」香りか、「タバコ」や「杉」の香りがするかなど、抽象的な香りや味わいの要素を、より具体的に、わかりやすく掘り下げていく手法です。
醸造学部の卒業生たち
カリフォルニア大学デービス校の卒業生としては、カリフォルニアを代表する生産者であるロバート・モンダヴィ氏を始め、数多くのワイン生産者やコンサルタント、日本との関係では、近年、日本ワイン中興の祖と言われるブルース・ガットラヴ氏などの多くの人材を送り出しています。
世界一のワイン・ライブラリー
また、カリフォルニア大学デービス校には、30,000 冊をこえる蔵書を誇る、世界最大のワイン・ライブラリーがあります。著名なワイン評論家であるヒュー・ジョンソン氏、ジャンシス・ロビンソン氏、ワイン生産者のワレン・ウィニアルスキ氏(「パリスの審判」で最高評価を獲得した赤ワイン「スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ」の生産者)など、様々な人・団体・企業から沢山の書籍・メモ・資料の寄贈や多くの寄付を受けています。
カリフォルニアがワインの銘醸地へと発展した原動力となり、多くの優れた人材を輩出してきたカリフォルニア大学デービス校の醸造学部は、ワイン産業や地域と大学が密接に関わり、実際に産業の発展に、人材や研究成果を通じて大学が貢献するという好循環を生み出しています。このような、教育や学問と産業や地域との連携が、新しいことを生み出していく、原動力になっていくのだろうと想像します。