ジュヴレ・シャンベルタンのローマ時代の遺構 (ブルゴーニュにおけるワイン造りの始まり)

ジュヴレ・シャンベルタン、ローマ時代のぶどう畑遺構

ジュヴレ・シャンベルタンで見つかったローマ時代のぶどう畑

2008 年にジュヴレ・シャンベルタンにて住宅地を拡張するための造成を行った際、様々な時代のものと見られる穴、柱穴、溝が見つかります。とりわけ長方形の穴は、長さ 90 ~ 130 cm, 幅 60 cm で、穴同士の間隔は、1.0 ~ 1.3 m 畝列と列の間は、2.9 ~ 3.0 m で等間隔に並んでいました。

穴の断面には、小さな樹木の幹と根が残した空洞が見つかりました。また、夫々の穴は、小さな石の柱によって 2 つに分割されていました。小さな樹木の幹と根の空洞は、ぶどう樹のサイズであり、長方形の穴を小さな石を使って 2 つに分割する手法は、ローマ時代に推奨されていたぶどう栽培方法であり、穴の中で見つかった陶器の破片は、西暦 1 世紀とローマ時代のものであると年代測定されました。また、列と列、穴同士の間隔は、ローマ・フィート (29.6 cm) の倍数でした。

また、ジュヴレ・シャンベルタンで見つかった遺構は、紀元 1 世紀のローマ時代に活躍した博物学者の大プリニウスや農学者のコルメラによるぶどう栽培法に関する記述に見られる「一つの穴に 2 本のぶどう樹を植え、根が絡まないように、真ん中を石で仕切って、穴の底は横向きに石を置く」手法と同一な形状でした。等間隔に並ぶ大きな穴の近くには、小さな穴も発見され、ぶどうを増殖させるために用いられた古代の手法である、ぶどうの新しい蔓を地中に埋めると、そこから根が出るという性質を利用して苗木を増やしていった跡と見られています。

2008 年にジュヴレ・シャンベルタンで見つかった遺構は、ローマ時代にはジュヴレ・シャンベルタンでぶどう栽培が行わていたことを示すもので、ブルゴーニュにおける最古のぶどう畑の跡です。27 列の畝が見つかり、合計 400 以上のぶどう樹を植樹した穴が見つかっています。紀元 1 世紀の頃には、すでにブルゴーニュで大規模なぶどう栽培とワイン造りが始まっていたことを客観的に補強する遺構となっています。また、現在のブルゴーニュにおけるぶどう畑は、丘陵部の斜面に広がっていますが、見つかったぶどう畑は、他のローマ時代におけるぶどう畑と同様に平野部で見つかっていて、この点でも、ローマ時代のぶどう畑であるという可能性が非常に高いと言えます。

ブルゴーニュにおける最古の記録

その後、ブルゴーニュにおけるぶどう栽培は、記録にも登場するようになります。ブルゴーニュにおける最古のぶどう栽培の記録は、西暦 312 年にコート・ドールの西にあるオータンのぶどう栽培農家がローマ皇帝コンスタンティヌス帝に宛てた嘆願書と言われています。嘆願書には、「生産されるぶどうの質があまり良くないため、税率を低くしてほしい」ということが書かれています。歴史的には些末な内容に過ぎないものの、ワインに関する歴史と言う観点からは、重要なものであり、このような軍事・行政・法律的にはそれほど重要でない内容の記録が残っていることは幸運なことと言えます。

カール大帝による記録

中世の時代になると、カール大帝とぶどう畑に関する記述が残っています。カール大帝は、自身でぶどう畑を所有しており、西暦 775 年にコルトンの丘にあるぶどう畑を教会に寄進したと言う記録が残り、現在のグラン・クリュ (Grand Cru, 特級畑) コルトン・シャルルマーニュに位置するぶどう畑は、ローマ教会のソーリューの聖アンドローシュ聖堂参事会 (Saint-Andoche de Saulieu) が、1789 年のフランス革命まで所有していました。また、コルトン・シャルルマーニュは、白ワインのみのグラン・クリュ (Grand Cru, 特級畑) ですが、元々赤ワインのぶどう畑だったところをカール大帝が自慢の豊かな髭をワインで汚さないように、白ぶどうを栽培させたという伝説によっても有名です。

*写真及び記載内容は、Inrap HP (Institut national de recherches archéologiques préventives – French National Institute for Preventive) を参照

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