ブルゴーニュのコート・ドール最北の村、マルサネは、赤・白ワインのみならず、ロゼのワインが、村名呼称格付けのワインとして認められているユニークな村です。マルサネの村名呼称格付けへの昇格は、1987 年と遅く、アペラシオン内には、グラン・クリュ (Grand Cru, 特級畑) やプルミエ・クリュ (1er Cru, 一級畑) といった上級格付けの区画は無いものの、とても美味しいワインが生産される優良なアペラシオンです。
マルサネのぶどう畑は、シュノーヴ、マルサネ・ラ・コート、クシュの 3 村、標高 260 ~ 320 m の斜面に広がっています。マルサネのぶどう畑は、ほぼ真東に向いた緩やかな斜面に広がっています。マルサネのぶどう栽培は、かなり早い時期から始まり、530 年頃には、マルサネでぶどう栽培が行われていたことが判明しています。中世の時代からは、ブルゴーニュ大公やフランス王家がマルサネにぶどう畑を所有し、現在でも「王のぶどう畑」という意味を持つクロ・デュ・ロワという区画が残っています。
マルサネのロゼ・ワイン
マルサネは、赤・白ワインのみならず、ブルゴーニュの産地としては珍しく、ロゼ・ワインを生産するアペラシオンとしても知られています。マルサネのロゼは、1919 年にジョセフ・クレール氏によって初めて造られました。現・当主のブルーノ・クレールは、ロゼを生産し始めた背景として「当時経済的に困っていたので、彼は何か新しいことを始めたいと考えていた。そしてそれはとても良い結果を生んだ。たぶん良すぎた。というのは、その後、何年間も、多くの人が、マルサネにはロゼしかないと考えるようになったから。」と言います。
マルサネの知名度を高めたロゼは、現在において、マルサネのアペラシオンにて最も標高が高い区画、あるいは、ぶどう畑側と集落側との境界線にある県道 122 号線よりも低い、集落側にある区画に限られ、必ずしもマルサネの主力ワインとは言えない状況です。
村名呼称格付けの取得
マルサネは、村名呼称格付けを取得する前まで、地域呼称の AC ブルゴーニュとしての格付けしか認められていませんでした。マルサネの生産者たちは、自らが生産するワインに自信と誇りを持っていたことから、ラベルに地区名を入れ始め、「ブルゴーニュ・ド・マルサネ」と記載して出荷することを始めました。
マルサネでは、1970 年代に、コート・ド・ニュイ・ヴィラージュという地域呼称に参入する運動が展開されたものの、フィサンやゴルゴロワンなど周囲の村々から、彼らのワインまでも、コート・ド・ニュイ・ヴィラージュに位置付けられるのではないかと怖れられ、上手くいきませんでした。その後、マルサネは、地域呼称ではなく、村名呼称の格付けを獲得し、時間はかかったものの、マルサネにとっては良い方向で、格付けでの位置づけが定まったと言えます。
ワインの味わい
マルサネの村名呼称格付けワインは、とても美味しいものが多く、特に、マルサネ村北部に位置するクロ・デュ・ロワ、ロンッジュロワ、ウズロワのぶどう畑からのワインは、優れた生産者が集まり、良質なワインとして知られています。
赤・白・ロゼが生産されるマルサネのワインで、特に、評価が高いのは赤ワインと言われています。マルサネの赤ワインについて、「ワインの色調は濃く、野生の桑の実やプルーン、カシスのアロマが特徴的。口当たりはしなやかだが、タンニンは強い。クロゼイユのような色をしたロゼは、摘みたてのぶどうやモモの弾けるようなアロマ。柔らかく果実味も豊かだが、酸味とボディもしっかりしている。白ワインはバナナやパイナップル、レモングラスのアロマがある。口一杯に広がる豊満さがあり、余韻も長い。」 (ブルゴーニュ、アペラシオン完全ガイド) と味わいを評価されています。