山梨県の甲州市勝沼町に、トンネルを転用して造った天然のワインカーヴ「勝沼トンネルワインカーヴ」があります。トンネルの左右に、視界の届く先までワイン保管用のラックがずらりと並ぶ巨大なワインカーヴは圧巻です。観光名所にもなっていて、時々、訪問者がトンネルの入り口からカーヴを眺めています。
全長 1,100 m の巨大な規模
勝沼トンネルワインカーヴは、全長 1,100 m の長さを持つ巨大な天然のワインカーヴです。中央本線の旧深沢トンネルをそのままワイン貯蔵庫に改造したものです。カーヴ内の気温は、年間を通じて 12 ~ 13 ℃ に保たれ、ワインの貯蔵に最適な環境になっています。
甲州市設置の案内板には、「ぶどうやワインの輸送に大きな役割を果たしたレンガトンネルは、新たな使命が与えられ、納められたワインは、静かに熟成の時を刻んでいます。」と書かれています。 私たちも、長期熟成に適したワインをトンネルカーヴ内で、保管させていただいています。
日本遺産に指定されているワインカーヴ
勝沼トンネルワインカーヴは、「日本ワイン 140 年史、国産ぶどうで醸造する和文化の結晶」と位置付けられ、日本遺産に指定されています。指定されている遺産は、旧大日影鉄道隧道、旧深沢鉄道隧道とその周辺の遺構です。旧大日影鉄道隧道は、勝沼ぶどう郷から続く遊歩道として開放され、旧深沢鉄道隧道は、ワインカーヴとなっています。
江戸時代から明治時代にかけて、ぶどうの産地である勝沼産のぶどうは、江戸 (東京) まで馬で、甲州街道を数日かけて運んでいました。明治36 (1903) 年に、大日影と深沢のトンネルと鉄道開通によって半日で大量に輸送することが出来るようになりました。それまでは、収穫後に日持ちする酸味の多い甲州種ぶどうしか長時間かけた輸送ができませんでしたが、トンネル開通によって、甘味が強くてあまり日持ちしないぶどうなどを含めて、様々な品種のぶどうを東京に送ることができるようになりました。また、重量の重いワインの輸送にも鉄道での輸送が活躍し、トンネルと鉄道の開通によって、山梨県勝沼などのぶどう栽培やワイン造りに大きな発展と革命をもたらしました。
旧深沢トンネルの歴史
深沢トンネルは、1905 年 (明治 35 年) に貫通し、翌 1906 年 (明治 36 年) に開通しました。煉瓦造りのトンネルは、近代化を象徴するような建築物です。1931 年 (昭和 6 年) に電化され、1968 年 (昭和 43 年) に複線化されたために、下り専用線になりました。
時間短縮の為、1997 年 (平成 9 年) に、隣に新トンネルが出来て開通したため、一旦、深沢トンネルは、鉄道輸送という役割を終え、暫く閉鎖されていました。
旧深沢トンネルと旧大日影トンネルは、2005 年 (平成 17 年) に JR 東日本から、旧勝沼町に無償譲渡されます。そして、旧深沢トンネルは、改修されて、同年の 2005 年 (平成 17 年) からワインカーヴとして生まれ変わりました。また、旧大日影トンネルは、日本遺産の遺構を体験する遊歩道として開放されています。
ワインカーヴの概要
全長 1,105.7 m、高さ 4.9 m、幅 3.6 m の坑内には、貯蔵ラックが左右の壁にずらりと並んでいます。手前 200 m が個人用、奥 900 m がワイナリー各社のセラーになっています。天然のワインカーヴとしてこれだけの規模を誇る貯蔵庫は、日本は勿論、世界でもそれほどないだろうと考えられる圧巻のカーヴです。