ビオディナミ (Biodynamie) 農法について

ビオディナミ農法について。 ワイン通販 レ・ブルジョン

ビオディナミ農法の普及

ビオディナミ農法について、毎年、多くの生産者が、より美味しいワインを造り出す為に、そして、より持続可能性の高い土地管理を行うために、ビオディナミ農法への転換を進めています。

ビオディナミ農法を導入しているぶどう畑では、馬に曳かせた鋤で畝と畝の間を掘り起こし、生長期の予測できない変化からぶどう樹を守るために、イラクサ、ダイオウ、ツクシ、ノコギリソウ、ヨモギ、ヒレハリソウなどの野草を水に浸して作った浸出液を散布します。ビオディナミ農法を導入しているぶどう畑では、蝶、カタツムリ、蛙、ウサギなどの小動物が、畝やぶどう樹の間を自由に動き回るという、牧歌的な、自然と調和したぶどう畑の光景が広がります。

ホメオパシーと類似する自然療法

「ビオディナミ農法の論理と言語は詩的だ。その成功は、何れもホメオパシーで聞かれる用語であるカチオン、キレート、菌根菌と同じくらい、ぶどう栽培家の動機、霊感、ぶどう樹への愛情と関係がある。それは肉体労働を要求し、一切化学薬品に頼らないという強い決意のもとに行われる。そして、それが、更なる肉体労働を要求する。」 (アンドリュー・ジェフォード) と言われるように、ビオディナミは、ホメオパシーと類似する自然療法であると言われています。

ビオディナミ農法は、農作業全体を一つの生命体、すなわち自己完結した全体的なシステムとすることを目的としています。農作業全体を一つの生命体と位置付けることによって、ぶどう畑とぶどう樹が、自身の力で病気を予防し、健全性を保つことが出来るように、ぶどう畑とぶどう樹が持つ潜在能力を引き出すことを目的としています。

ビオディナミ農法は、一貫した思想に基づく体系であり、持続可能(サステナブル)な農業やビオロジック農法のさらに先を進んでいます。ビオディナミ農法は、ビオロジック農法など有機農法よりも 20 年も早く提唱されていた農法であるにもかかわらず、外部の大半の人々からは、より広く受け入れらているビオロジック農法の一変種としてしか見られていませんでした。しかしながら、ビオディナミ農法で認証されているドメーヌは、ビオディナミ農法のほうがより厳格で様々な要件が要求されるため、もし彼らが望むならば、ビオロジック農法でも認証を受けることもできます。しかし、そのような事例は、皆無と言っていいです。

ビオディナミ農法の歴史や概要

ビオディナミ農法は、オーストリアの哲学者、ルドルフ・シュタイナー博士によって創始された体系です。ルドルフ・シュタイナー博士は、1924 年に実施した一連の講義で、初めてビオディナミ農法の概念を提示しました。ルドルフ・シュタイナー博士は、ビオディナミ農法の概念を提示した翌年に他界しますが、ルドルフ・シュタイナー博士の提示した概念は、著書である「ビオディナミ法の実用ガイド」として纏められています。
その後、ビオディナミ農法は、ドイツのマリア・トゥーン博士(天体エネルギー栽培法を考案)が体系立てて発展させ、著書「天体エネルギー栽培法」として纏め、浸透していきます。

ビオディナミ農法は、特別に配合した堆肥と薬草の浸出液を使い、太陰暦に従って、農作業や醸造作業を組んでいきます。ぶどう栽培やワイン醸造において、太陽や月、星の運行がぶどうに影響を与えているという考え方自体は、昔からあり、農作業に採り入れられてきました。そして、ビオディナミ農法に太陰暦を用いる理由は、太陽・月・惑星などによってもたらされる宇宙的力と自然力が、ドメーヌ、そのぶどう樹、そのワイン、そして働く者たちに健康をもたらすからと理解されています。

ビオディナミ農法に対する懐疑的な見方

ビオディナミ農法は、これ以外にも、実地の経験を重視するという強い考えがあります。ビオディナミ農法の体系は、現在の科学的な方法が広く受け入れられる前の、形而上学や自然哲学に由来するものであり、形而上学や自然哲学の用語が、外部に存在する多くの人々に、ビオディナミ農法に対する自然な懐疑的態度を、大学の化学分野の教授たちからの嘲笑だけでなく、広く呼び起こしてしまいます。

ビオディナミ農法への懐疑的な見解もあり、長い間、ビオディナミ農法は、髭をぼうぼうに生やしたような、非協調主義的な実践者たちが、月夜に篝火の周りに集まり、裸で踊って豊穣を願うというような、変な印象を持たれていました。

ビオディナミ農法に対する見方の変化

しかしながら、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ、ルロワ、ルフレーヴといった名高いブルゴーニュのトップ・ドメーヌがビオディナミ農法をいち早く取り入れて実践し、素晴らしいワインを次々に生み出していくにつれ、ビオディナミ農法への見方が変わっていきます。

実際、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティの支配人、オーベル・ド・ヴィレーヌは、ビオディナミ農法について、「科学者も、我々と一緒に働き、知識を深めるにつれて、ビオディナミ農法を良く理解し、その優位性を説明できるようになる。」と言います。

ビオディナミ農法を実践している生産者がより上質なワインを造り出していることに議論の余地は無いものの、判明しきれていない根本的な部分は、「上質なワインを造り出しているのは分かる。しかし、それが何故なのか判っていない。」ことと言われています。ビオディナミ農法を実践する生産者の多くは、ある意味、狂信的でありあらゆる細部に拘っている傾向があるため、ビオディナミ農法というよりも、むしろ、ワイン造りへの強烈なこだわりそのものが上質なワインを生んでいるのかもしれないという見解もあります。

ビオディナミ農法について、公平に考えるには、一旦、奇抜なぶどう樹の治療法、牛糞堆肥を詰めた牛の角を土中に埋めること、宇宙的な力がぶどう樹とワインを改善するという言葉、などから離れる必要があり、実際にぶどう畑がどのように違うのか、ワインにどのような結果が現れているのか、実際にビオディナミ農法に転換した人の体験全体に集中するべきと考えられています。

ワインの味わいに見られる優位性とその根拠

ビオディナミ・ワインとそうでないワインとの比較テイスティングが何回も行われ、結論は出ていないと言えます。しかしながら、同一ドメーヌのワインについて、ビオディナミ農法のワインとそうでないワインとのテイスティングによる比較は、極上ワインを造る多くのドメーヌが、実際にブラインド・テイスティングによる比較を行っており、殆どのドメーヌが、ビオディナミ・ワインのほうが好ましいと判断しています。この事実は、ビオディナミ農法の優位性を示す有力な証拠といえると考えます。

科学的な根拠として挙げられる事項のひとつとして、米国ワシントン州立大学のジョン・レガノルド教授による研究があります。ジョン・レガノルド教授は、10 年間にわたって、ビオロジック農法とビオディナミ農法からのワインについて、ワインの味わいや成分分析の結果を比較しました。ほとんどの計測値で大きな差異はみられないものの、ある明らかな差異があり、大きな議論を巻き起こしています。

ビオディナミ農法で栽培されたぶどうに見られる明らかな差異として、ビオディナミ農法によるぶどうの方が、フェノール、アントシアニン、フラボノイド、そして、最も注目されているのは、抗がん性物質のレスベラトロルを多く含むという点が挙げられます。これらの物質は、全身獲得性抗性と呼ばれ、多くの植物に内在し、低レベルの昆虫や病原体の攻撃によって獲得されます。抵抗性が獲得されるのは、植物が攻撃に対抗するために、防御物質を生成するからであり、同時に、ワインの味わいにとっても非常に重要な成分となっています。ビオディナミ農法では、堆肥や堆肥液の使用によって増えるバクテリアによる作用が全身獲得性抗性の獲得を促進させる、ツクシなどをもとに作られる浸出液に含まれるシリカが全身獲得性抗性の獲得を促進させているなどと言われています。一方、害虫駆除剤を使用すると、ぶどう樹は、全身獲得性抗性の生成を、必要ないと判断して、中断してしまうのではないだろうかと考えられています。

現在でも、ワックス・シーリングの効果や月の満ち欠けと作業の関係など、ビオディナミ農法に関する沢山の事項についての科学的な解明にはもう少し時間が掛かりそうです。よって、最終的には、自分の舌と鼻で判断するしかないとも言えます。現在でも、多くのことは判明していませんが、経験則的には、多くの人がビオディナミ農法によるワインが、ビオロジック農法を超える味わいの要素を備えていると感じているように思われます。

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