ジュヴレ・シャンベルタンの区画において、シャンベルタンは、シャンベルタン・クロ・ド・ベーズと双璧を成してジュヴレ・シャンベルタンの頂点に君臨しています。シャンベルタンの起源は、ベーズ教会が所有していたクロ・ド・ベーズの区画から生み出されるワインの評判を聞きつけた農夫のベルタンが、クロ・ド・ベーズのぶどう畑近くに、自らのぶどう畑を開墾したことがきっかけです。ベルタンは、ドメーヌを開設し、クロ・ド・ベーズにおけるぶどう栽培の方法を勉強して、自らのワイン造りを高めていきます。
ベルタンは、ぶどう畑ある斜面上部に森を作って、午後はぶどう畑の上部に影ができるようにし、ぶどうの成熟を遅らせるようにしました。また、斜面上部の森は、降雹を防ぐ役割を果たしています。
ぶどう畑の上部に森を作ったため、ぶどう畑の南側は、風の通り道となり、陰が掛からないぶどう畑の斜面も、摘果が少し遅れるようになりました。影や風の通り道となって、シャンベルタンの区画は、気温が周囲よりも低くなり、ぶどうはじっくりと成熟して、収穫時期が遅くなりました。これにより、ドメーヌ・ベルタンが所有するシャンベルタンの区画は、周囲のぶどう畑よりも凝縮度の高いぶどうが収穫されるようになりました。
ドメーヌ・ベルタンが所有するぶどう畑は、素晴らしいワインを生み出す区画として、シャン・ド・ベルタン (Champ de Bertin, ベルタンのぶどう畑) と言われるようになり、やがて、発音を短縮して、シャンベルタンと呼ばれるようになり、世界中に知られるようになりました。
シャンベルタンは、ナポレオンが愛飲していたことでも有名です。とくに、戦い向かう際には、勝利を祈願しながら、必ずシャンベルタンのワインを飲んでいた、シャンベルタンしか飲まなかったと言われています。唯一、戦いの前にワインを飲まなかったのは、フランス軍が大敗したロシア遠征の時であったと言われています。このようなジンクスから、シャンベルタンのワインを飲まなかったから戦で負けたのではと言われることもあるそうです。
ナポレオンが愛飲していたエピソードと力強く優雅なワインのスタイルから、シャンベルタンは、「王のワイン」と言われるようになり、世界中のワイン愛好家にとって憧れのワインとなっています。
また、シャンベルタンにまつわる歴的なエピソードと高い名声にあやかり、ジュヴレの村長は、1848 年に村名をジュヴレからジュヴレ・シャンベルタンへと変更し、村で生産されるワインの評価を高めていきました。
現在、シャンベルタンのぶどう畑は、複数の生産者によって所有されていて、ワインの品質は生産者ごとに異なるものの、「それでも良いボトルは、異次元への世界のパスポートである。」 (ビル・ナンソン氏) と称賛されています。