ドイツにおける主力赤ワイン品種
冷涼な気候の白ワインに飽きてきて、かといって、もう最高のブルゴーニュの赤ワインを買うほどの余裕もない。このようなときは、ドイツのシュペートブルグンダーが良いかもしれません。シュペートブルグンダーは、ピノ・ノワールのドイツにおける別名であり、実は、700 年以上も前に、ドイツのラインガウに植えられたというドイツで長い歴史を持つ品種です。ドイツの赤ワイン生産において、もっとも重要なぶどう品種であり、ドイツにおけるぶどう栽培面積の 11.1 % を占めています。ドイツ各地の気候や土壌と相性が良く、良質なぶどうがドイツ各地で収穫されるため、ドイツのシュペートブルグンダーは、値頃感に優れる高品質なワインが多い傾向があります。
ブルゴーニュのピノ・ノワールとの比較
メディアや業界のワイン専門家は、ドイツでもっとも重要な赤ワイン品種が、ブルゴーニュのコート・ドールにて生産されるもっとも優れたピノ・ノワールのワインに引けを取らないワインを生み出しているのか、常に議論をしています。例えば、ジャンシス・ロビンソン氏のようなもっとも批判的で要求の厳しい批評家ですら、いくつかのドイツ産ピノ・ノワールに、コート・ドールでもっとも優れたプルミエ・クリュ (1er Cru, 一級畑) のワインと同じくらいの高得点を与えています。おそらく、ブルゴーニュのコート・ドールで産出されるピノ・ノワールに比肩するワインは、ドイツにおいて、生み出されていると考えるのが自然と言えます。
ピノ・ノワールのクローンとドイツ産シュペートブルグンダー
例えば、ブルゴーニュのピノ・ノワールを代表するクローンであるディジョン・クローンから造られたワインと、ドイツのバーデンに植えられているシュペートブルグンダーの古木からのワインとを比較すると、「2 種類の全く違う品種をテイスティングしえいるのではないかと思うはずだ。」 (シュテファン・ラインハルト) と言われています。
ブルゴーニュのクローンから造られるピノ・ノワールは、チャーミングで優美であり、「赤いリースリング」という称号が相応しい品格を備えたものもあります。一方で、バーデンのカイザーシュトゥールで代々育てられてきたマサル・セレクションによるワインは、個性が際立ち、芳醇で力強く、強烈な印象がある一方で、余韻はブルゴーニュのクローンから造られるものほど長くはないなどの特徴を備えていたりします。ピノ・ノワールのドイツ的な特徴を有し、洗練さで劣るものの勢いがあって屈強、しっかりとした構成を持っているワインという特徴をそなえていることが多いです。
生産者の動向
ドイツの生産者たちは、ピノ・ノワールの生産において、ぶどうの完熟度だけでなく、さわやかさに配慮したワイン造りを進めています。例えば、新樽の比率を下げたり、あるいは、消費者の要請に沿って樽を選択したり、ドイツのシュペートブルグンダーは、より洗練され、果実感が豊かになってきました。
シュペートブルグンダーは、バーデンやアールという産地での生産がとくに盛んなものの、アール、モーゼル、ラインガウなどの粘板岩、ファルツ、バーデンなどの石灰岩、フランケンの赤色砂岩などの各産地の土壌においても相性が良く、夫々の産地で良好な結果を生み出しています。収穫後、6 ~ 10 年後になって初めて真価を発揮するものもあれば、若いうちから魅力的なワインもあります。