イタリア・ワインの中核を成すキャンティ・クラシコ
キャンティ・クラシコは、トスカーナ・ワインのみならず、イタリア・ワインの中核を成すと言って良いイタリアを代表するワインです。
15 世紀初頭以来ずっと、「キャンティ」という地名は、南はフィレンツェから北はシエナまで、西はポッジボンジから東はガイオーレまでの広大な地域を指しています。緩やかな丘陵地が続くキャンティ・クラシコの地域は、標高 800 m の高さまで広がる丘陵と、200 m まで傾斜する渓谷を持っています。ぶどう栽培の多くは、標高 250 ~ 500 m の丘陵斜面に広がっています。
風光明媚なワイン産地
息を吞むようなうねりを特徴とする景観を持つキャンティ・クラシコの地域は、昔から画家に好まれてきました。オーク・栗・松・糸杉などが、ずらりと並んで植えられ、総面積 7 万 ha のうち、1 万 ha がぶどう畑で覆われ、所々にオリーブ、フィレンツェを代表するすみれなどの様々な花々、地中海特有の雑木林も見られます。
キャンティ・クラシコの地域は、非常に独特な建築物であるカーザ・コローニカ (Casa Colonica) と呼ばれる伝統糖的な石造りの農園と、フィレンツェとシエナの間で何世紀にも亘って繰り広げられた戦争を切り抜けるために建設された銃眼や小塔を持つ砦があちこちにあって、世界中から観光客をひきつけています。
原産地呼称の位置づけ
キャンティという原産地呼称の原型は、1716 年に、トスカーナ大公のコジモ三世が「キャンティ」という名称の地域を設定したことに始まります。1924 年には、33 の生産者たちが、自分たちのワインを守り、独自のブランドを作るために、品質保護協会 (Consorzio) を設立します。このときに、キアンティ・クラシコのシンボルとして、現在でも使用され、広く知られている「ガッロ・ネーロ」 (黒い雄鶏) が採用されました。
1932 年に、「キャンティ」の生産地域が、トスカーナにおける他の地域に拡大されると、最初から「キャンティ」であったキャンティジアーニ (Chiantigiani, キャンティ、特にキャンティ・クラシコの住民を意味する) は、産地の拡大を嫌ったため、最初から「キャンティ」だった地域には、「歴史ある」「伝統的な」を意味する「クラシコ」 (Classico) という形容詞を付ける権利が付与されました。
1967 年に、キャンティは、DOC に認定され、最初から「キャンティ」だった地域は、クラシコという言葉を付け加えることで、特別なステータスを得ました。1984 年に、キャンティが DOCG に昇格した際も、クラシコという特別なステータスは維持され、1996 年に、「キャンティ・クラシコ」として、単独の DOCG を名乗ることが許されました。
キャンティ・クラシコと国際品種
キャンティ・クラシコの生産者数は、1924 年の33 から 2008 年には 600 以上に増えました。キャンティ・クラシコを名乗るには、サンジョヴェーゼを 80 ~ 100 % 用いる必要がありますが、国際品種のブレンド比率については、相反する意見が対立しています。
現在、キャンティ・クラシコのブレンドに用いることの出来るぶどう品種は、カナイオーロ、マンモロなどの地域における伝統品種、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラーなどの国際品種のぶどうです。
キャンティ・クラシコのワインをもっと「国際的」に評価されるワインにするために、国際品種のブレンド比率引き上げを求める人々と、トスカーナ・ワイン独自のアロマと構造を歪めないために、国際品種の比率を下げるように求める人々の相反する意見が対立しています。
実際、キャンティ・クラシコの地域で最も名高く、高価なワインは、DOCG 「キャンティ・クラシコ」のワインではなく、IGT ワイン、所謂「スーパー・トスカーナ」と言われています。スーパート・スカーナは、トスカーナの至る所で造られていますが、その中でも、最も重要な産地は、やはり、銘醸地の「キャンティ・クラシコ」地域であり、多くの優れたスーパー・トスカーナ生み出されています。ワイン雑誌や評論が、DOCG 「キャンティ・クラシコ」の厳しすぎる規制に言及しながらも「キャンティ・クラシコのスーパー・トスカーナ」を称賛し、多くの紙面を割いて紹介しています。
他にも、醸造・熟成にオーク樽を用いるか否か、伝統的に大樽での熟成が多い中で、小樽のバリックによる熟成でもよいのか、などの議論があります。キャンティ・クラシコのワインは、何がキアンティ・クラシコの対象になのかについて、様々な議論があるものの、何れにしても、高品質で非常に人気のある優れたワインを生み出す産地であることには変わりなく、イタリア・ワインを代表するワインであることに間違いと言えます。