プーリア州は、質・量とも目覚ましい発展を続けるワイン産地
イアリアのプーリア (Puglia) 州は、ワイン生産の歴史が古く、古代フェニキア (Phoenicia) 人が紀元前 2000 年以上前に、プーリア州でワイン造りを始めていたと言われています。ローマ帝国時代は、ローマとギリシアを結ぶ交通の要衝と位置付けられ、一部は現在でも栽培されている様々なぶどう品種がギリシアから持ち込まれて栽培されていました。
近年、プーリア州は、ワインの生産量が伸び続けており、イタリアのワイン生産において、ヴェネト州と 1 位を争う水準まで増えてきている急速な発展を続けるワイン産地です。また、2000 年頃から野心的な生産協同組合や生産者たちが、自社で瓶詰めをして、優れたマーケティングを駆使し、国外に打って出るようになり、プーリア州は、質と量の両面において、目覚ましい発展を続けるイタリアのワイン産地といえます。
温暖な気候と平坦な地形
プーリア州は、温暖な気候で降水量が少なく、イタリアにおける他の州とは異なり、山岳地帯も僅か 1.5 % と少なく、平坦な地形が多いために、機械での収穫が可能な為、ぶどう畑からは安定した収量が得られます。プーリア州は、温暖で晴天の続く気候と平坦な地形が広がっていることから、アメリカでは、「ヨーロッパのフロリダ」と言われています。好天が続く温暖な気候によって、安定して高品質なぶどうが収穫できるため、従来、プーリア州は、天候に恵まれなかった年や大きな病害に見舞われた地域向けに、不足するぶどうをイタリア各地に陸送して供給してきました。そのため、プーリア州は、「イタリアのぶどう補給庫」とも言われ、発展してきた産地でもあります。また、1980 年代頃まで、量を重視してワインを造ってきたため、バルクワインの産地として有名であり、「イタリアの酒蔵」などと言われていました。
また、プーリア州は、高い山が無いために、河川が生まれにくく、土地が平坦であり、広い面積のぶどう畑を確保しやすい土地でもあります。プーリア州の土壌は、主に分厚い石灰岩とドロマイト質の岩石で出来ており、特に石灰石は、ワイン栽培に最適な土壌のひとつとして知られ、乾燥して日照時間が長い気候と共に、平坦な広い土地に、ぶどう栽培に最適な土壌が広がっています。
野心的な生産者たちの登場と品質の改善
恵まれた気候とワイン造りに適した土壌が広がる土地であったため、プーリア州は大量生産型のワイン造りが優先されてきました。しかしながら、2000 年頃から、ワイン生産者たちの意識改革が進み、ぶどうと生産されるワインの品質向上の取り組みが加速しました。また、優れたマーケティングを行って、海外に販売網を広げ、世界各国の市場における評価を急速に高めていきます。また、野心的な生産者の参入が進んでおり、例えば、プーリアの潜在性にいち早く気が付いたスーパートスカーナで有名なアンティノーリが、1998 年に、「トルマレスカ」というワイナリーを開設して傑出したワインを生み出しています。
プーリア州では、品質向上を目指す生産者の試行錯誤により、ぶどう樹の仕立て方法として、アルベレッロ方式、テンドーネ方式、垣根方式などが、ぶどう畑の自然条件に応じて取り入れられ、新しいぶどう品種の栽培も試みられています。また、醸造面においては、近年の醸造技術の進歩をいち早く取り入れる生産者が多く見られ、例えば、ぶどう果汁を低温で発酵する技術などを用い、フレッシュで果実味を活かす手法が浸透するなど、ワインの品質改善が急速に進みました。 また、地域に伝わる古代からの銘酒を復活させるなど独自のワイン造り、新たなコンセプトを反映したワイン造りの導入とブランドの創造よって、プーリア州のワインに対するイメージは、大きく変わりつつあります。
生産者たちの多くは、値頃感抜群な美味しいワインを造ることを目指している
プーリア州のワインは、品質改善が急速に進んでいるものの、依然として多くのワインは、価格が落ち着ていてお手頃な価格で楽しむことができます。プーリア州の生産者たちは、そもそも、プレミアム・ワインの生産に固執していない生産者が多く、値頃感抜群な美味しいワインを造ることを目指していることが多いです。地域全体として良心的な生産者が多いことから、お買い得なワインを幾つも見つけることが出来るため、ワイン愛好家にとって、とても有難い産地といえます。