セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ミュスカデルの内、セミヨンが最重要で、薄い果皮は貴腐菌の付着を招きやすく、貴腐菌の胞子が果実の水分を吸収し、脱水作用によって果実内の糖・酸・グリセリン酸を濃縮させます。

ソーテルヌでは、ぶどうの法定収量が、最大で 25 hl/ha に低く抑えられ、最上の生産者ほど更に低くなります。
最高峰のイケム (Yquem) の場合、一本の樹からグラス 1 杯分のワインしか造られません。
収量を低く抑える理由は、秋に貴腐菌が発生する前に、最終アルコール濃度が 12 ~ 14 % までなる位まで糖分濃度を高くして「黄金色の成熟」を達成するためです。
ソーテルヌの造り手たちは、貴腐菌は、ぶどうの花が咲く頃に付着し、それからぶどうが生理的に熟成するまでの間、じっと休眠して待っていると考えています。

貴腐ワイン生産にとっては、ぶどうの収穫時期が重要です。
貴腐は無作為に発生するため、ソーテルヌの生産者は果実を選択的に摘果する方法に磨きをかけてきました。
理想的には、摘み手がアルコール濃度21%になる可能性のある貴腐葡萄を見つけ出して摘果しますが、効率的な摘果には、忍耐と反復が必要であり、経験を積んだ摘み手が不可欠です。
悪性の灰色カビ病に侵された果実、貴腐の成長しすぎた果実、不良な果実を取り除き、選択的に摘果を行う必要がある為、貴腐ぶどうの収穫は、手間と時間が掛かり、収穫が2週間で済む場合もあれば、収穫を数回に分けて、3ヶ月もかかる場合もあります。
貴腐菌に侵されたぶどうはしなびて、一見腐ったようにしか見えませんが、水分が蒸発し、糖や酸、アロマが凝縮しています。
摘み手は、収穫期に幾度も畝間を行き来して貴腐ぶどうを見極め、貴腐ぶどうのみを丹念に摘み取り、そこから極上の貴腐ワインが生み出されます。
もちろん、収穫期の雨も、収穫とワインの質に大きく影響します。

ワイン評論家のヒュー・ジョンソン氏は、以下のシャトーを紹介しています。

・イケム (Yquem)
「時が磨き上げた数々のボトルは、世界に神の味覚を味わう特権をもたらした。そのワインの高い酒質がほんのわずかでも低下することさえめったになく、ライバルたちが懸命に追いつこうと拍車をかけている時でさえ、イケムは真の到達点として峻然としている。」

・クリマン (Climens)
「クリマンは、今、バルザックの筆頭シャトーとしての地位を揺るぎないものとして固めつつあり、ソーテルヌの中でその上に立つものは、絶対的な君主であるイケムだけである。バランス、若々しさ、精妙さという点では、右に出るものは無く、同時にその超熟する能力も傑出している。」

・ギロー (Guiraud)
「そのワインは芳醇で、凝縮感があり、燻香が漂い、アロマは精妙で、同時に後味は新鮮で、ピリッとした風味もある。2000年以降、ギローは、発酵をすべて新樽で行い、それによってワインに更なる純粋さが付け加えられたように思える。」

・ラフォリー・ペイラゲイ (Lafaurie-Peyraguey)
「ワインのスタイルは、偉大なソーテルヌそのもので、芳醇で凝縮され、同時に調和とのバランスの良さがエレガントさを漂わせている。アロマ的には、このワインは非常に純粋である。」

・クロ・オー・ペイラゲイ (Lafaurie-Peyraguey)
「最近このドメーヌは、ソーテルヌでも指折りの洗練されたワインを造り出すことで知られるようになった。このワインは、ソーテルヌで最も均整の取れたワインの一つと言える。その力強さは、1990 年代半ばから確実に向上し、2001 年からはさらに飛躍している。」

・リューセック (Rieussec)
「感動を呼び起こす豊かさと芳醇さのあるシャトー・リューセックは、現在、力強さと凝縮感の面でもイケムに近づきつつある。」

・スデュイロー (Suduiraut)
「最近のヴィンテージは、貴腐果粒の豊かな凝縮感が素晴らしく、オレンジ系の柑橘類の香りが充満し、ミネラルの後味が驚くほど長く続く。」

・クーテ (Coutet)
「クーテは、しばしばクリマンと比べられ、バルザックではライバルと見なされている。強さという点ではクリマンの方が若干優れ、柑橘系のピリッとくる爽やかさという点ではクーテが優れているようだ。」

・ドワジィ・デーヌ (Doisy-Daene)
「いつもドワジィ・デーヌは、芳醇で重量感があるというよりは、純粋でエレガントである。ワインの高揚感と躍動感は驚くばかり。」

・ジレット (Gilette)
「2010年でも最も新しく瓶詰めされたヴィンテージは 1989 年である。奇妙なことではあるが、このような長い期間をかけた熟成を経ているにもかかわらず、このワインは暫く瓶熟することを推奨したい。」

・ラ・トゥール・ブランシェ (La Tour Blanche)
「このシャトーは、フランス農業省が所有し、管理している。ラ・トゥール・ブランシェのスタイルは、全般に、力強く、豊かで、凝縮感があり、スパイスや南国のアロマがある。」