アロース・コルトン (Aloxe-Corton)
コルトンの丘に広がるぶどう畑
アロース・コルトンは、ブルゴーニュ、コート・ド・ボーヌ地区の中心地、ボーヌ市の北へ5kmほどにある人口200人の小村です。
有名な「コルトンの丘」の斜面に広がる美しいぶどう畑から、優雅で気品に満ちたすばらしい赤・白ワインが産出されます。
アロース・コルトンにある Grand Cru (特級畑) である「コルトン」と「コルトン・シャルルマーニュ」は、「コルトンの丘」の最上部に広がり、Grand Cru (特級畑) の面積は、「アロース・コルトン」 (Aloxe-Corton)、「ラドワ・セリニィ」 (Ladoix-Serrigny)、「ペルナン・ヴェルジュレス」 (Pernand-Vergelesses) に跨り、ブルゴーニュで最大の広さを誇ります。
アロース・コルトンの Grand Cru (特級畑) 「コルトン」と「コルトン・シャルルマーニュ」は、なだらかなカーブを描く「コルトンの丘」の高地にあり、その周囲を囲むように、13区画の 1er Cru (一級畑) が並び、よりも低い斜面に村名格付けのぶどう畑が広がっています。
アロース・コルトンは、赤・白ワインが生産され、赤ワインの生産が多い産地です。
Grand Cru (特級畑) の「コルトン」は、赤ワインとごく少量の白ワインが生産され、「コルトン・シャルルマーニュ」は、白ワインのみが生産されています。
アロース・コルトンの赤ワインは、濃い色調と黒果実の芳香を伴うしっかりとした骨格のワインで、熟成を経て豊満で優雅なワインになります。
白ワインは、凝縮感と優雅さを纏い、濃密で厚みあるボディと綺麗な酸が特徴の長命なワインです。
極上ワインを生む特級畑
これら区画のワイン評論家ヒュー・ジョンソン氏の評価は以下の通りです。
「コルトン」 (Corton)
「上質なコルトンの赤には、しなやかでほっそりした濃密さと凝縮感があり、多くの上質のコート・ド・ニュイの赤でさえも、それと比べると、おおまかでぼやけていると感じられる時がある。しっかり造られたコルトンは、25歳になる前に熟成に近づくことはまずあり得ず、その時でさえ、甘くとろけるような感じというよりは、筋肉質で、濃密なままである。」
「コルトン・シャルルマーニュ」 (Corton Charlemagne)
「上質なコルトン・シャルルマーニュには、それとわかる独特のインパクトと濃密さが、ムルソーの最上級畑 1er Cru (一級畑) ペリエールかと錯覚するようなミネラルの芳香を持つものさえあると思う。上質のコルトン・シャルルマーニュは、若い時は実に濃密で、熟成した時にも、ワインの根底に濃厚さが漂っている。」
カール大帝が愛したワイン
「コルトン」というぶどう畑の由来は、カール大帝の統治時代、西暦775年に遡ります。
フランク王国の北方のザクセン族(ドイツ)と戦争に際し、キリストのご加護を得るため、西暦775年にカール大帝の領地であったぶどう畑を修道院に寄進したのがきっかけと言われています。
後に、フランク語でローマ皇帝の葡萄園を意味する「クルティス・オトン」と呼ばれるようになり、それが短縮され「コルトン」に、その後に、白ワインのアペラシオンには、カール大帝のカールのフランス名、「シャルルマーニュ」が付き、「コルトン・シャルルマーニュ」と呼ばれました。
もともとカール大帝は、鹿や羊肉の焼き肉とコルトン(当時はクルティス・オトンと思われる)赤ワインの組み合わせが大好きで、戦場での野宴で焼き肉と一緒に好んで飲んでいたそうです。
コルトンの赤ワインが好きだったのは、ハンガリー王の娘で、カール大帝の母が元々住んでいたのがブルゴーニュであり、カール大帝の母ゆかりの地のワインであったことなどが挙げられています。
ある日、いつものように焼き肉と赤ワインのコルトンとの組み合わせを楽しんでいると、妃や妾らがカール大帝の髭が真っ赤に染まっていることを茶化したそうです。
以来、カール大帝は、「コルトンの丘」にある皇帝のぶどう畑(クルティス・オトン)に白ワインのぶどうを植えるように命じ、以降、自身は白ワインを好んで飲むようになり、また、その区画は後に、「コルトン・シャルルマーニュ」と呼ばれるようになったそうです。
ただし、実際にコルトンの地で白ワインの生産が盛んになるのは1960年代以降のことです。
逸話の信憑性はともかく、畑の由来は、カール大帝が教会に寄付したことに遡ることは事実と言われており、実際に、フランス革命の時代、1789年まで教会が所有するぶどう畑となっていました。
このようにアロース・コルトンは、カール大帝の時代から既に皇帝に愛されるほどの銘醸ワインの産地であり、由緒正しいブルゴーニュを代表する極上アペラシオンです。
卓越した生産者一覧
ヒュー・ジョンソン氏は、素晴らしい造り手として、以下の生産者を紹介しています。
・ガストン・エ・ピエール・ラヴォー (Domaine Gaston et Pierre Ravaut)
「このドメーヌのお奨めワインは、疑いなく村名呼称のアロース・コルトンである。しかし、私は彼らの造るラドワの赤も多く持っているが、一度も落胆したことがない。赤と白の Grand Cru (特級畑) もラベルに恥じない出来だ。」
・モーリス・シャプイ (Domaine Maurice Chapuis)
「私個人としては、シャプイのコルトン・ランゲットに惹かれる。それは、幾分かは私のコレクター魂によるものである。もはや別の生産者のものは存在しない。それは愛らしく上質なコルトンである。」
・ムヌヴォー (Domaine Meuneveaux)
「これらのとても飲みやすいワインは、大変お買い得である。一部の生産者の造るブルゴーニュ・ルージュよりも安価な村名呼称レベルのアロース・コルトンは、購入リストの始めの方に書いておくべきだ。アロース・コルトン 1er Cru (一級畑) は、非常に上質なボーヌの水準を示すワインで、コルトンの骨格の片鱗を見せる。」
・ボノー・デュ・マルトレイ (Domaine Donneau du Martray)
「私は、このドメーヌのコルトン・シャルルマーニュがブルゴーニュの白の最高傑作の一つであることを疑わない。最初大きな歓喜の衝撃が襲い、それがフィニッシュに向かってゆっくりとフェード・アウトしていく。ドメーヌ・ボノー・デュ・マルトレイのワインは一つの基準である。」
・デュブルイユ・フォンテーヌ (Domaine Dubreuil-Fontaine)
「その栽培面積の広さとワインの質からして、このドメーヌが長い間多くのワイン商のレーダーをかいくぐって飛行してきたのは、特筆に値する。」